2012年2月29日水曜日

涙と鼻水の初添乗


添乗員になるための面接が終わって採用が決まると、家のポストにぽんと下呂温泉日帰りの日程表が入っているのに気がついた私。

まさか。

トレーニングなし?

もう行けってこと?

え?挨拶の仕方とか、マイクの練習とかなんかあるんじゃないの?

なし?ぶっつけ本番?

そのまさかまさかでちょっと会社で説明されて、マニュアル読まされただけで本当に私は見ず知らずの48人のお客さんと岐阜県の下呂温泉に添乗を任されたのでした。

その頃は5月で添乗員の人手少なかったらしく、トレーニングしている暇ないけど、私がやらないと本当に誰もいなかった状態らしく、アメリカから帰国し働きたくて働きたくてしょうがなかった私は引き受けることにしたのでした。

まず私は百円均一でお客さんがアンケートを書く時に必要なペンやおつりを入れる小銭入れ、マニュアルを入れるバインダー、迷った時の方位磁針まで余計なものを買ったりして戦に備えていました。

「明日どんなお客さんに会うんだろう。ちゃんと運転手さんと仲良くなれるだろうか。」

色んな思いと不安で一杯になりながらも前泊地の滋賀県の西彦根ビジネスホテルに向かいました。

私「こんばんは、お世話になります。ほにゃらら会社の廣瀬です。」
受付の人「お待ちしておりました、廣瀬様。109号室が廣瀬様のお部屋でございます。」

会社が前払いしておいてくれていて、自分はサインするだけでよかったので、添乗員ってこんな風に泊まれるのかとちょっと感動もしながら、不安は消えず、そそくさとお客さんのバスの席順を決め出す。バスの席順の決め方も教えられてなかったので、自己流に一時間くらいかけて決めた。

もう最終的にはもう不安になってもしょうがない!やるしかない!と思い、寝た。

起床は6時。そそくさとスーツに着替え、ミニスーツケースと日程表とかばんと持って集合場所に向かった。

日本のお客さんというのは本当に行動が早いので、もうすでに何人かは待っていた。まずバスの運転手さんに挨拶し、これが初添乗であることを大アピールする。

私「運転手さんですか???私今日初めてなんです!本当に頼みます!!!」
運転手さん「初めて?え?トレーニングとかもしてないの?」
私「してないんです。一週間前に会社で面接で、何も知らない状態で今日来たんです。」
運転手さん「(しばらく沈黙)まぁとりあえず、俺もフォローするから、とにかく笑っとけ!いいな!」

すごくいい運転手さんで、すごく協力的だったので本当にラッキーでした。お客さんの数まで数えてくれて、積め残しがないかまで確認してくれた運転手さん。一期一会だったけど、すごく感謝しています(涙)

お客さんが集まりだし、みんなバスに乗りたがっていて、ツアー代をバスで集金する私。一人のお客さんが決定的なことを言い出す。

「私の席がないんやけど・・・」

がーーーーーーーーーーーーん!しまった。一人席書くの忘れてたんや。なんて失態。

幸いにそのお客さんはすごくいいお客さんで私にどなったり怒ったりしませんでした。すごく寂しそうに後ろの席に座ってましたけど(涙)

もう何回謝ったか分からないほど謝罪し、ツアーは始まる。

私「おはようございます。本日一日お付き合いして頂きます添乗員の廣瀬と申します。皆様朝お早い中私どものツアーに参加して頂きまして誠にありがとうございます。本日のツアーの日程はまず滋賀県の・・・」

マニュアル通りしゃべりだす私。とにかく余計なことはしゃべらず、シンプルに無難に終わらそうと思ってた私。こんな添乗員でも運転手さんがしっかりしていればツアーは続行する。たまにあまりにも説明不足なので運転手さんが代わりにマイクを握ってしゃべってくれたこともある。運転手というより、プチアシスタントになっていた。

お客さんも温泉につかってちょっとほっこりしたみたいで、お客さんとのコミュニケーションも少しやわらぎ、私もみんなの前でマイクでしゃべるのが慣れてきたいた。

特に大きな問題もなくツアーは終わりつつあった。問題と言えば、ホテルのランチのメニューが違うものに変更されていたので、ホテル側が謝罪し特別に高級な牛肉入りのお弁当を後から追いかけて持ってきた事位だった。

問題は最後の挨拶だった。どうしめくろう?こんな何も知らない添乗員が便乗員化し一緒に下呂温泉に行かせていただいてありがとうございましただろうか?それともこれからも便乗員としてがんばりますので、応援よろしくお願いしますだろうか?なんて言おう。

とにかくマニュアル通りしゃべり出す私。

私「皆様、本日は大変お疲れ様でございました。まもなく朝出発いたしました西彦根駅に到着予定でございます。私は昨日から京都から前泊しておりました。」

お客さん1「まぁそんな遠いところから、ありがとう。」

もう緊張とか不安とかが全部ふっとんで涙が止まらなかった。知らない場所に一人でホテルで泊まって、知らないお客さんのリーダーの役割を担って知らない場所に連れて行くなんて本当に経験したことのないプレッシャーだった。

悲しくて泣いたのではないけど、涙を隠しながら、鼻水ずるずるしながらとにかく自分が
未熟であったことを謝罪し、これからもっとがんばりますとしめくくった。

私の挨拶を黙って聞いてる運転手さんが一言
運転手「あぁ、忘れ物ないことだけいってあげてくれるか」

きっとお客さんも心の中できっとこの子は始めての添乗だったんだろうなぁと気づいてくれたのか、最後は本当にやさしく接してくれて、ちょっと意地悪だったお客さんも最後はありがとうありがとうといって帰って行きました。

西彦根駅で下ろしてもらって、最後に運転手さんがクラクションを鳴らして最後のあいさつをしてくれた。

私の初添乗の記憶は涙と鼻水でどろどろになって、人の優しさに救われなんとかこれからがんばっていこうと思えた一日になったのでした。


2 件のコメント:

  1. 初添乗お疲れ様です。
    いい思い出になったみたいですね。
    ドライバーさんが優しい人でよかったですね。

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    1. お返事遅れてすみません。初めての添乗で泣いて恥ずかしかったですけど、今としては初々しい体験です。

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